2016年1月22日

古今東西、ナビゲーションの話 -Part2 GPSなしでも航海ができる!-

Part1をまだ読んでいない方は先にお読みください。

ひと昔前のお話

磁石の羅針盤

まずは、ジャイロコンパスというすんごい機械が発明される(1908年と言われています)までは、どうやって方位や自分の向いている方向を知っていたのでしょうか?

それが前回もちらっと出ました方位磁針、それににいろいろ工夫して揺れる船の上でも使いやすくした羅針盤、通称マグネットコンパス。そのまま磁石の羅針盤ですね

地球に磁石が入っていると考えると北極にS極、南極にN極が入っていると都合がいいのですが、実際は北極とS極、南極とN極の場所はずれていて、しかも毎年少しずつ変わっていくのです。

なので、場所によってはぴったりと北を指すこともありますが、ほとんどの場所ではずれてしまいます。ちなみに今の日本付近では場所によって5°〜7°反時計方向にずれてしまっています。
ずれてしまっているのはしょうがないので、その場所で何度くらいずれているかを調べてさえおけば、ほとんど問題なく使うことができます。

また、これだけではなくマグネットコンパスにはもう一つ欠点があります。
方位磁針の近くに他の磁石を置くと正しい方向をささないのと同じで、ほとんどが鉄でできている船自体が方位磁針が北を指すのを妨げてしまうのです。しかも、地球上の場所や船の向いている時ごとに右に左に狂いが生じるので、これを見抜くのは楽ではありません。

実は、この鉄でできた船による狂いを"自差"なんて呼ぶのですが、この自差はさらに時代をさかのぼる昔にはほとんどありませんでした。
なぜって、船が木でできていたからです。
なので、昔の人はマグネットコンパスを割と快適に使えていたと思えます。

ただし、局所的な磁気異常でその場所で知られているよりもズレが大きくなることはあります。(富士山の樹海では方位磁針が回るなんていう都市伝説もありますが、あくまでずれ方が多少変化するという程度です。)

魔の海域として知られるバミューダ・トライアングルもこの地磁気に異常があったため船乗りが進む方向を間違え、遭難が多発したなどという説もあります。(実際は嵐などに起因する遭難が多いようです。)

便利なGPSが出てくる前

宇宙にある人工衛星からの電波で、自動で自分の位置がわかるという昔の人からしたらドラえもんの道具なみのGPSが実用化(1993年と言われています)される前には、地球上の基地局からの電波を使って自分の位置を知るLORANなどという、仕組みが使われていたこともありました。

しかし、その前となり、電波を使わない時代となると、自分の位置をどうやって知るかはまさに大問題で使われていた方法も一気に様変わりします。

その方法とは、ズバリ

太陽、月、星です!

その昔から天文学者や航海者たちが空を観察して、解明した星の動きのメカニズムで、
ある瞬間に太陽や月、星が見える高さはわかるようになっていました。

そのため、太陽や月、星の高さを六分儀と言われる角度を測るのに適した特殊な望遠鏡で計測して、難しいサインコサインタンジェントがたくさん出てくる計算をすることによってやっと船の位置がわかったのです。(これを天文測位、略して天測なんて呼びます)

もちろん精密な六分儀が必要で、かつ正確な星の動きが必要なので、最近〜現在に天測に比べて、昔の天測はかなり大雑把(測った星の高さが10分の1度違えば、10kmも誤差が出てしまうため)だったようです。
今ではかなり正確に天測ができて、停電の時でも大変な計算は電池で動く小さな計算機がやってくれるようになりました。

しかも、星たちの動きのメカニズムは分かっていても、"正確な時計"がなくては果たして星がどこにいる時に測ったかがわからないので、どうしようもありません。

この時点で時代は1750年ごろまでさかのぼっています。
時計ができれば、星の動きで海の上でも場所がわかるようになるということがわかっていたため、当時のイギリスでは正確な時計を作った者(実際には正確な位置を求める方法を考案した者)に多額の賞金が与えられることになっていました。

イギリスに住んでいた時計職人だったジョン・ハリソン(Jhon Harrison,1663-1776)は、そんな話を聞いて、時計職人として最高の時計を作り上げようと決意します。

揺れて湿気の多い船の上で、長い航海の間壊れない正確な時計を作るというのはとても難しいことだったのですが、ジョンはそれを成し遂げます!
多数の試作機を作り上げ、実際の航海での使用も行われたのちに、やっとのことで功績が認められて賞金を受け取ることとなりました。(その時点で死去するわずか3年前と言われています)

まさに全生涯をかけて時計を作り、人類にとっての課題であった「自分がどこにいるのか?」という問いを解決したのでした。

さてさて、時代をさかのぼって、1750年ごろ、これより以前は、自分がどこにいるかを知るには、正確な時計がないために不完全な天測と、昨日から〇〇の方向に〇〇マイルくらい進んだから今日はこの辺にいるだろうという推測で航海をしていました。

しかも、正確な時計による天測を使って初めて正確な地図(海図)が作れるようになったので、この時代は「地図もない大海原をどこにいるかも正確にわからず、コンパスと推測だけを頼りに航海していた」という時代になります。
これがまさに1492年のコロンブスのアメリカ大陸発見などに代表される大航海時代というヨーロッパの人々による地球全体の壮大な探検のときの航海でした。

もちろん発見をした船はごく1部で多くの船が遭難している時代で航海はとっても危険なことだったのです。


と、ここまで現代文明へとつながるヨーロッパの人々たちとともに歴史を遡って来ましたが、実は彼らより先に世界の海をまたにかけて航海-ナビゲーション-していた人たちがいるのです。

Part3 はそんな人々のお話です。
乞うご期待!

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