2016年1月26日

船乗りと食事の話

船乗りと食事の話

みなさん"船乗り"と聞くとどんなイメージがありますか?
今日はそんな船乗りたちの食事やお酒についての物語です。

船乗りや海賊で思い浮かべることに"飲んだくれ"があるのではないでしょうか?

キャプテン・クックと壊血病

ときは大航海時代
冷蔵庫のない時代、海の上での長い航海の間、保存しておける食料はあまりありませんでした。船乗りたちの食事は主に、硬くて固くてしかも虫が湧いているビスケットと、塩漬け肉でした。(他にもチーズや豆、野菜も積んでいましたが、すぐに腐ってしまうので食べられるのは最初の数週間の間だけです)


船にはもちろんコックが乗っていたのですが、一人当たりの水と食事の量はしっかり管理されており、違反すれば厳しい罰が待っていました。
ビスケットはそのままでは食べられないほど固くなりスープに浸してやっと食べれるようなものでした。
塩漬け肉は大きな樽に入っており、長い航海の最後になればいくら塩につけてあるとはいえ、異臭を放つようになっていました。
もちろん積んでいる真水もどんどん濁ってきて雨がまさに恵みの雨となっていました。

そんな食生活が続くと、多くの船乗りはビタミンC不足で壊血病という恐ろしい病気にかかってしまいます。
コロンブスから始まった大航海時代の間、長い航海では悪い時には半分くらいの船乗りが壊血病で死んでしまうのは当たり前のことだったのです。

大航海時代の最後に現れたイギリスの航海者キャプテン・クックが自らの航海でキャベツの漬物を多く積み込み、寄港地でも果物や野菜、新鮮な肉を手に入れるようにしていた(当時の多くの船長は食料に多くの金額を使うことは少なく、クックはこの点では乗組員思いの船長でした。)ため、長い航海で1人も壊血病で失うことはありませんでした。

それから研究が進みイギリスの船は全てライムジュースを積み込み、船乗りは毎日飲まなければいけないということになりました。

このライムジュースは長期保存で濁った真水に混ぜて飲むことでその不快さも少しは和らいだとか。。

ラム酒

ラム酒もライムジュースと同じく、イギリスの船に深く関わりがあります。
サトウキビを原料に作られるラムは、大航海時代の中盤〜後期に船乗りたちがアメリカのカリブ海周辺の地域にサトウキビを持ち込み、作るようになったと言われています。

18世紀中頃から1970年までイギリス海軍は海兵にラム酒を支給していました。
「グロッグ」というのは水割りのラムのことですが、配給のお酒をすぐに飲み干してしまう強者のために、ラムをストレートではなく、水割りで支給したのがはじまりです。

また、貿易を行う商船でも嵐を乗り越えるために、眠ることなく働きづめた後は船長から酒の配給があり、労をねぎらわれたとのことです。

また、ナポレオンとイギリスの戦いであるトラファルガーの海戦では、戦いには勝利したものの戦死してしまったネルソン提督の遺体をラム酒(実際はブランデーだったとも言われている)に漬けて腐らせないようにイギリス本国へ持ち帰ったためにイギリスなどではラム酒のことを"ネルソン提督の血"と呼んだりもします。

なんと、そんな遺体を持ち帰る途中に、漬けてあるラムを船乗りが飲んでしまったなんて話も残っています。

そんなお酒にまつわるたくさんの伝説が残っていますが、本当に船乗りはお酒が大好きだったのでしょうか?
海賊や船乗りがラム酒をたくさん飲んでいたのは事実ですが、今でいうアルコール中毒の船乗りがいれば、一方でいつも腹ペコの船乗りたちの一部は重労働の後には、酒じゃなく食事をくれと思うことも多かったのではいないでしょうか?


ちなみに、オススメのラムの飲み方は、ライムジュース&ソーダ割りです。
美味しくて、船乗り気分を味わえるので是非お試しください!


塩漬け肉

樽いっぱいに入った塩漬け肉。
肉が食べられるなんて意外といいと思うかもしれませんが、実際は美味しいものではなかったようです。
現在でいえばハムなんかも塩に漬けて熟成したりしますが、当時の塩漬け肉はイメージとしては屋外でずっと保存した質のものすごく悪いコンビーフです。

そのままではなく、スープにしたりして食べられることも多かったよう。
ここで、そんな塩漬け肉のお話をひとつ

ハムや特にソーセージで有名なドイツの港町ハンブルク
今でもヨーロッパで最大級の港ですが、古くから港町とし栄えてきました。

蒸気船が登場する少し前の時代、帆船がまだ客船として航路を持っていた頃に、ハンブルクからはアメリカ大陸行きの旅客船が出ていました。

旅客船と言っても、主な目的は物資を運ぶことで、船内の一室程度が全旅客向けの唯一の場所でした。

もちろん寝具も食事も何も付いていません。
船の運航は全て船乗りがやってくれますが、生活の世話については一切と言っていいほどありませんでした。
唯一、用意されたのが料理用の小さな"かまど"です。
今の客船とは大違いですね

そんな船に乗る客にとって長い航海の間に何を食べるのかが、大きな問題です。
港町のハンブルクでは、幸いなことに塩漬け肉を安く手に入れることができました。
また、名産の玉ねぎも安く買うことができました。

しかし、そのまま食べてもまずい塩漬け肉を何とか美味しく食べるために
塩漬け肉と玉ねぎをミンチ状に切り焼いて食べると、これが美味しい!

そうやってハンブルクからアメリカへ向かう船の上でハンバーグは生まれたのです。諸説あるみたいですが)

それにしても客船でありながら、食事を自分で用意しなければいけないのは、船に不慣れな客にとってはものすごく大変なことだったでしょう。


バイキング

日本で大人気な食べ放題のバイキング!
これの語源も船に由来しています。

中世の北欧(ノルウェー、デンマーク、スウェーデンあたり)に住んでいた人々は"バイキング"と呼ばれ、グリーンランドなどを経由し大西洋を渡って、コロンブスより先にアメリカ大陸に達したり、一方でヨーロッパで交易や略奪を行っていました。

そんなバイキングの語呂の良さと豪快なイメージに目をつけた日本のレストランが食べ放題のことをバイキングと名付けて売り出したところ一気に言葉が広まったそうです。

現代の船乗り

現代の船には冷蔵庫ならぬ冷蔵室がしっかり完備されていて、長い航海の間でも最高級のディナーが食べられるクルーズ客船もあり、お客さんが自らハンバーグをこねていた時代とは全く違う船旅が味わえるようになりました。

船乗りの食事も大きく変わりましたが、一方でお酒好きは変わっていないかもしれません。
普通に買うと、酒税やビール税が高いですが、外国に行く船は"日本"ではないので免税で安くお酒を買うことができます。
そのため、外国航路の船乗りは免税のお酒を手に入れて飲むことができるのです。(実際には仕事もあるので呑んだくれては入られませんが)

なら、クルーズ客船でも安く買えたらいいのですが、客船には基本的に船の上にバーやレストランがあるため、お酒の個人での持ち込みはできません。
ですので、もしお酒が好きで船旅をしたい方は、客船以外の船(練習船や調査船?)に乗れるようにしてみるのがいいかもしれませんね。
ただし、プールやレストランはありませんが。。

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